アクワイア(ACQUIRE)についての話 その22(アクワイア誕生の話)

アクワイア(ACQUIRE)の話 その22_アイキャッチアクワイア(ACQUIRE)

お疲れ様です。 のだじゅらく と申します。

アクワイアはいかにして誕生したのか、
『シド・サクソンのゲーム大全』やA Tribute to Sid Sacksonから記録していきたいと思います。
(追記)海外サイト:Acquisition GamesThe Strong National Museum of playのおかげでさらに情報はアップデートされました。

■『アクワイア』のゲームデザイナー

『アクワイア』のゲームデザイナーはシド・サクソンです。
彼は1920年のシカゴ生まれ、2002年没。
現在では近代ボードゲームの黎明期を支えたゲームデザイナーとして有名です。
ドイツにおいて1981年に『フォーカス』でアブストラクトゲームながら、
ドイツ年間ゲーム大賞を受賞しています。

彼がボードゲームデザイナーとして一般的となるのは、1960年代に入ってからでした。
ニューヨーク市立大学に入学し、優秀な成績で土木工学の理学士号を取得しました。

大学卒業後はニューヨーク市の土木技師(戦艦ミズーリ、航空母艦ヨークタウン、ヴェラッツァーノ・ナローズ橋、世界貿易センタービルの設計にも携わる。)として働いていました。

そのため、ボードゲームの活動は雑誌への寄稿や自費出版での活動にとどまっていました。
※ちなみに『フォーカス』はこのとき発表されました。
そして、技師としての仕事を辞め、本格的にゲームデザイナーに専念したのは1970年からです。

■アクワイアの誕生

商業デビュー作は『アクワイア』ではなく、『スート・ユアセルフ』を昇華させた
「ハイ・スピリッツ・ウィズ・カルヴィン・アンド・ザ・カーネル」でした。

これはシドがプロとして最初に出版したゲームであり、
1962年にミルトン・ブラッドレイ社によって世に出た。
ゲームの原題は『ハイ・スピリッツ』というだけのものだったのだが、
MB社がセールスを促進するためにカルヴィン・アンド・ザ・カーネルのライセンスを追加したのだ。

シド・サクソン・ギャラリー 掲載サイトはこちら

余談ですが、ミルトン・ブラッドレイ社は「人生ゲーム」の原型に関わっています。

そして、その同時期1964年に3M社から「アクワイア」が発売されています。

ん?アクワイア (Acquire)は1962年では…?

「1962年」は3Mから一般販売された通常版のコピーライト表記によるもの。
(外箱の日付は 1962年ですが、これはおそらくアートワークの著作権の日付によるものです。)
実際に発売されたのは、テストマーケティング用に限定リリースされたいわゆる
『ワールドマップ版』が1963年、通常版が1964年です。
少々ややこしいですが、一般に普及されたのは1964年と考えられます。
参照元:A Tribute to Sid Sackson , The Strong National Museum of play

ちなみに、3Mは略称です。実際は2002年までミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社(Minnesota Mining & Manufacturing Co.)です。
現在は略称である3Mを使用した「3M Company」に変更されています。
3M社はゲーム部門を持ち、1962年から1974年まで30種近いゲームを販売していました。

この時ゲームを作っていたのは、シド・サクソン(Sid Sackson 1920~2002)とアレックス・ランドルフ(Alex Randolph 1922~2004)の2人のゲームデザイナーだったのです。

余談ですが、ゲーム大全(A Gamut of Games)は1969年です。
改めて、日本語でゲーム大全を読めることには感謝しかありません。

■アクワイアのアイデアはどこから?

ゲーム大全の序文にはアクワイアに関しての記述があります。

大きな影響となったのは、自分の貯金で買ったロトのセットだった。
ゲームそのものは残念なことにひどく退屈なものだったが、その埋め合わせはあった。
数字のついたディスク90枚のうち、引いたものを配置していくチェック・シートがゲームに付属していたのだ。

シド・サクソンのゲーム大全 発行日:2017年12月2日初版第1刷

ロトと聞くと私たちは宝くじの印象がありますが、
数字が格子状に並んだシートを1枚受け取り、カードまたはタイルを1枚ずつ引いて
シート状に一致する数があればその上に置く。
そして、最初に一列を埋めたプレイヤーの勝利する古典ゲームです。
つまり、現在でいうところのビンゴゲームに近いです。

■初めはアクワイアが名前ではなかった?

我々の中ではアクワイア(人によってはアクワイヤ)という単語で認知されていますが、
3M社に始めこのアイデアを提出した際(プロトタイプ)は名称が違いました。なんと!

その名前はバケーション(Vacation [休暇])だったようです。う~ん。イメージが違う…。

そして、バケーション(Vacation [休暇])の前にも別の名前が存在していることがわかりました。

シド・サクソンはゲーム界で非常に尊敬されていました。この日付のない原稿で、シドは鉛筆で「DECISION」の名前を消し、ゲームのアイデアを「VACATION – The Game of Hotels」と改名しました。

この変更は、シドが DECISION ゲームのアイデアを IS Unlimited のゲーム エージェントである Aliceに提出した日が 1959年6月3日であるため、1959年6月3日以降に行われました。

https://www.acquisitiongames.com/index.php/history-of-acquire/the-origin-of-acquire?start=1 (グーグル翻訳したもの)

最初に3M社へ提出した際、シドが本当にこれを『バケーション』と呼んでいたことを信じることは難しい。新しいタイトルをシドに提案したのは3M社であり、そして彼は了承した。

技術的に言えば、これ(『バケーション』)はこのゲームに対する3番目の名前である。シドは子供の頃、自分の子供用ゲームを改良して遊んでおり、『ロト』を戦争ゲームへと作り替え、それを『ロト・ウォー』と呼んでいた。この初期デザインが、ついには『アクワイア』となったのである。

シド・サクソンのアーカイブ 掲載サイトはこちら

シドは 1963年9月9日までこのゲームについて言及しませんでした。その日、シドは「3Mは VACATION を ACQUIRE に変更したいと考えています」と書きました。これ以上の情報にアクセスできないため、3M社は ACQUIRE というゲームのアイデアをすでに持っていて、その後シドが送ってきたアイデアを偶然見つけたとしか考えられません。

https://www.acquisitiongames.com/index.php/history-of-acquire/the-origin-of-acquire?start=2 (グーグル翻訳したもの)

『ロト』『ロト・ウォー』DECISION(決断)』『バケーション』『アクワイア(ACQUIRE)』と変化したようです。つまり『バケーション』は4番目の名前だったのです。これは非常に興味深い内容です。

■アクワイアの誕生

次のステップはシートをヨーロッパの国々に分割し、私だけの歴史を作ることだった。

シド・サクソンのゲーム大全 発行日:2017年12月2日初版第1刷

つまりは、アクワイアの原型は国の興亡を再現したウォーシミュレーションだったようです。
現在でもハズブロ社からリスク(Risk)が売られてるのも、何かを感じずにはいられません。

ディスクの集合体から得たものと同じ着想から、
ホテルのチェーンを形成し、拡大し、合併させるというアイデアが生まれた。
このアイデアは、株券と現金という要素をさらに足すことによって、
~省略~ 私のゲーム、アクワイアとなった。

シド・サクソンのゲーム大全 発行日:2017年12月2日初版第1刷

画像元:https://boardgamegeek.com/boardgame/5/acquire

■貴重な参考資料

こうして、シド・サクソンの代表作は世に誕生しました。
いくつものリメイクが重ねて、素敵なことに現代でも遊ぶことができます。
参照とした『シド・サクソンのゲーム大全』には、『アクワイア』『キャント・ストップ』『フォーカス』『アイム・ザ・ボス』といった彼の代表作のエッセンスが含まれています。
実はアレックス・ランドルフのゲームも入っています。

Googleブックスで調べれば、一部内容も読めますので、興味がある方は是非読んでみてもらいたい一冊です。

また、より深く知りたいあなたにはこちらのサイトがおすすめです!
A Tribute to Sid Sackson
このサイトは、シド・サクソン逝去の際、Gamers Alliance ウェブサイト(https://gamersalliance.com/)によって編まれた特別トリビュート記事を
同サイトのハーブ・レヴィ (Herb Levy) の許諾のもと日本語に翻訳したものとなっています。
『Acquire アクワイア』はもちろん、他の知られざるゲームの情報が網羅されています。
まさにシドサクソンに関する情報を知りたい方には必須の情報サイトです!

アクワイアに関する資料はこちらから!

サムネ

アクワイア資料館

また、新版は文字通り「獲得(アクワイア)」する価値が十分にあります。
ぜひぜひ、遊んでみてください。

国内のアクワイア競技者が増えることを祈って。

ではまた次回。ごきげんよう。

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